いぼ・みずいぼとは
俗にいう「いぼ」とは皮膚から出っ張った出来物の事を示しますが、その種類や原因は様々です。例えば、年齢に伴い顔にシミのような茶色く、触るとぼこっと出っ張ったものは脂漏性角化症という出来物でシミの一種です。また、首に多発する小さないぼはスキンタッグと言い、年齢や遺伝的な体質により生じます。手や足を中心に出現し、見た目は魚の目のように見えるいぼは尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)と言い、これは皮膚に感染していくパピローマウイルスというウイルス感染で、特に子供に多いです。
また、「みずいぼ」と呼ばれるいぼは、これも子供に多いのですが皮膚に小さなドーム状の隆起ができるのが特徴で、伝染性軟属腫ウィルスによるウィルス感染によるものです。陰部に発症するイボには尖形コンジローマと呼ばれる性感染症もあります。このように、いぼと呼ばれるものには様々な種類と原因があり、それぞれ治療が異なりますので、まずは皮膚科での診断が必要です。
いぼ(尋常性疣贅)
原因
ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus、HPV)です。特にHPVの1型、2型、4型、27型、57型などが関与しています。このウイルスは、直接接触や傷口を通じて皮膚に感染し、ウィルスが増殖することでいぼを形成します。HPVは感染力が強く、一度感染をすると別の部位の皮膚へと移っていきます。また、直接もしくは物を介して人から人に感染していきます。自然治癒がなかなか見込めないウィルスですので治療が必要です。
症状
主に手や足に発生することが多く、小さな硬い隆起を形成します。足の裏に発症すると魚の目のような症状となり、歩いていて痛みを伴う事もあります。
治療方法
- 液体窒素療法:いぼ治療において最も標準的で効果的な治療法です。液体窒素の温度は約-196℃で、これを数秒間いぼにあてる事により、凍結させ、細胞が壊死させます。またその刺激によって免疫細胞が活性化し、ヒトパピローマウィルスに対する抵抗力が作られていきます。1週間から2週間に一度治療を行います。
非常に治療に抵抗するウィルスですので、治療期間が数カ月に及ぶことが多いです。弱い治療では効果が乏しいため、少し強めに液体窒素をあてる必要があります。その際は痛みと、治療部位に水泡形成が起こることがありますが、治癒に導くための必要な反応であり、それにより治癒までの期間は早まります。デメリットとしては痛みを伴う治療であること、また場合によっては色素沈着や瘢痕が残る可能性があります。 - モノクロロ酢酸:いぼに塗布することにより皮膚を壊死させ、ウィルスに対する免疫を誘導します。
- フェノール:いぼに塗布することにより皮膚を腐食させ、ウィルスに対する免疫を誘導します。
- 炭酸ガスレーザー治療(自費):レーザーにより、いぼとその周囲の皮膚を焼き取ります。他の治療で抵抗する場合は検討する治療です。再発する場合もあります。
- ナス療法:意外に思われるかもしれませんが、野菜のナスをいぼに貼る治療です。治療効果に関する論文の報告もあり、試してみる価値のある治療法です。
様々な治療で効果が不十分の場合や、液体窒素の痛みで治療が続けられなかった方に使用し、治癒している症例を経験しています。方法などについては来院された際に詳しくご説明します。
みずいぼ(伝染性軟属腫)
原因
伝染性軟属腫は、ポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫ウイルス(Molluscum contagiosum virus, MCV)」によって引き起こされます。
このウイルスは皮膚の表皮層に感染し、特に子供に多く見られますが、成人にも感染することがあります。感染した皮膚との接触やタオル、衣類、プール(特にビート板)などを介して、また感染部位を触った後に他の部位を触ることで広がります。
症状
体や四肢が多いのですが、顔にも現れます。直径2~5mmのドーム状の肌色からピンク色、白色の隆起で、真ん中が少しくぼんでいて、滑らかで光沢があります。治りかけてくると発赤してかゆみを伴ってきます。
治療法
伝染性軟属腫は多くの場合、数ヶ月から数年で自然に治癒しますが、感染拡大を防ぎ、症状を軽減するための治療が行われることがあります。以下は主な治療法です。
物理的除去
- スプーン状のピンセットでひとつずつ摘まみ取ります。あらかじめ麻酔のテープを貼ってから治療を行うと痛みは緩和されます。比較的数が少ない場合にはこの治療を行います。
- 液体窒素療法:液体窒素で凍結し、細胞を破壊する。
銀イオン配合クリーム(自費) 3A M-BF クリーム
銀イオンには強い抗菌作用があり、人体には安全な成分です。イボとその周囲に外用します。2週間〜2か月程度で水イボが赤く変化します。これは効果が現れてきたサインです。治療開始から平均2-3か月程度で水イボを治癒できることが期待できます。水いぼの数が非常に多い場合はピッセットで取る治療は苦痛を伴いますので、まずは外用治療をおすすめします。目に見えなず潜んでいるウィルスも治療できるメリットがあります。
よくある質問(Q&A)
ウイルス性のいぼはお風呂やプールでうつりますか?
いぼ(尋常性疣贅)は人から人に直接、もしくは物を介してうつりますが、水を介して移ることはありません。ですので、お風呂やプールの制限はありませんが、感染者と肌と肌が触れる事や、タオルを共有するのは控えたほうが良いでしょう。また、みずいぼ(伝染性軟属腫)の場合も人から人に直接、もしくは物を介してうつりますので、水そのものを介して移ることはありません。ただし、プールの場合はビート板を介して感染する可能性が高いので注意が必要です。また肌と肌が触れる事や、タオルを共有する事も控えましょう。
いぼ・水いぼは、放置しても治りますか?
いぼ(尋常性疣贅)は放置すると拡大し、他者に感染していく場合が多いため、一般的には治療が必要となります。一方、みずいぼ(伝染性軟属腫)の場合は放置すると拡大はしていきますが、いずれ免疫が獲得されて自然治癒が期待できる疾患ですので、経過観察するケースもあります。
いぼ・水いぼになったらやってはいけないことはありますか?
気になって触ったり引っ掻いたりしてはいけません。これによりウイルスが他の部位や他人に広がる可能性があります。タオルやカミソリ、衣類などの共用物を避け、特にタオルは他人と共有しないように注意しましょう。
子どものいぼ・水いぼは大人にもうつりますか?
いぼ(尋常性疣贅)は大人にもうつる感染症ですので注意が必要です。一方、みずいぼ(伝染性軟属腫)の場合は比較的大人には移りにくいのですが、アトピー性皮膚炎など肌のバリア機能が低下している場合はうつる事があります。
水いぼの白い芯は自分でとっても良いですか?
白い芯にウィルスが豊富に含まれていますので除去することで治癒が期待できます。しかし自分での処置では取り残す可能性が高く、また他の部位に拡散させる可能性があるためお勧めしません。
いぼ・水いぼは市販薬(例:イボコロリ、等)で治りますか?
イボコロリに含まれているサリチル酸は、実はいぼ(尋常性疣贅)に対する有効性が期待できる成分ですが、水いぼ(伝染性軟属腫)に対する効果はありません。また、オロナイン軟膏、イソジン軟膏でいぼ・水いぼが治るという根拠やデータは全くありませんので使用することはやめましょう。
いぼ・水いぼの家族がいる場合は洗濯物を分けた方がいいですか?
物から物への感染はしないため洗濯物を分ける必要はありません。
いぼ・水いぼは皮膚科で治療すればすぐに治りますか?
いぼ(尋常性疣贅)は、通常は液体窒素療法を行い、皮膚の薄い部位であれば数回で治癒する場合もありますが、角質の厚い部位であれば数カ月以上治るまでかかります。一方、みずいぼ(伝染性軟属腫)の場合は銀イオン配合クリームで、2-3か月で治癒する可能性がありますが個人差があります。放置した場合でも約1年で自然治癒する可能性があります。
いぼ・水いぼを潰してしまったらどうすればいいですか?
まずは手をしっかり洗い、患部を清潔な水と石鹸で洗浄します。その後、患部を清潔な絆創膏やガーゼで覆います。また、潰れた部分を触らないようにし、他の部位や他人に触れないように注意しましょう。