帯状疱疹とは
帯状疱疹は、水ぼうそうのウイルス(VZV)が原因で発症する病気です。子供の頃にかかった水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体の神経節に潜んでいます。免疫力が低下した時にそのウイルスが再活性化し、帯状疱疹として現れます。
放置すると神経痛が長期にわたり残る可能性がありますので、早期に皮膚科で診断を受けて治療をすることが重要です。
帯状疱疹の症状
初期症状
体の片側に痛み、違和感が現れます。痛みはズキズキ、ピリピリ、と表現するような刺すような痛みが周期的に起こるのが特徴です。
発疹が出る前に痛みの症状が出るため、この時点で診断がつかない場合があります。
発疹
その後、同じ部位に赤い発疹ができ、水ぶくれが現れます。発疹は神経の走行に一致して広がりますので、進行すると帯状になります。
痛み
通常痛みは経過とともに軽減していきますが、発症してから1か月は痛みが残ることが多いです。また、神経痛が数週間から数ヶ月にわたり痛みが続くことがあります(帯状疱疹後神経痛)。特に70歳以上の高齢者が発症した場合は、帯状疱疹後神経痛のリスクが高まります。
全身症状
頭痛や発熱を伴う事があります。
神経麻痺
陰部に発症した際は排尿障害を引き起こすことがあります。
ラムゼイ・ハント症候群
耳の周りや耳の中に発疹が出る場合、顔面神経麻痺、耳鳴り、めまいなどを引き起こすことがあります。
帯状疱疹発症の原因
免疫力が低下することが主な原因です。ストレス、疲労は引き金になることがあります。また、免疫力が低下する病気に罹患されている方や、免疫を低下させる可能性のある治療(薬)を受けられている方はリスクが高まります。
また加齢も原因になります。特に50歳以上になると発症率が高くなり、60歳以上になるとさらにリスクが高まり、70歳以上での発症率がピークとなります。若年層でも発症する可能性はあります。
帯状疱疹の治療
抗ウイルス薬
帯状疱疹の初期に抗ウイルス薬を使用することで、発疹の治癒を早め、帯状疱疹後神経痛の発症リスクを減らすことができます。
鎮痛薬
一般的にはアセトアミノフェンが有効ですが、強い痛みの場合は容量を増やして鎮痛を図ります。また、腎機能に問題が無ければロキソプロフェン(ロキソニン)の内服もご検討いたします。急性期の強い痛みの場合は、当院ではオピオイド系の鎮痛薬であるトラマドールの処方も行っております。帯状疱疹後の神経痛に対しては、プレガバリン(リリカ)などの治療も行っております。
いずれの治療もしっかりと痛みが緩和するように併用し、容量の調整をすることが重要と考えています。
帯状疱疹の予防法(予防接種)
日ごろから免疫を低下させないようにストレスを軽減し、規則正しい生活をおくることは重要です。
また、近年ではシングリックスという新しい帯状疱疹ワクチンがあり、長期に渡り高い予防効果が期待できます。50歳以上、もしくは50歳以下であっても免疫力が低下する疾患や治療を受けられている方は接種が可能です。
帯状疱疹は発症すると神経痛が長期間、持続する可能性がある疾患ですので、ワクチン接種を検討してください。
よくある質問(Q&A)
帯状疱疹でしてはいけないことは何ですか?
患部を冷やすことはしないでください。冷やすことで神経痛が強く出ます。逆に温めると痛みは和らぎますので、突発的な痛みが出た際は、温めたタオルをあてて患部を温めたり、入浴時にはゆっくりと湯船につかり体を温めると良いでしょう。
帯状疱疹は他の人にうつりますか?
ほとんどの日本人は水ぼうそうのウィルスは体内に潜伏状態で持っていますので、人に感染させる可能性は低いです。ただ、水ぼうそうのワクチンを打っていない乳児幼児には感染させる可能性がありますので、濃厚接触は避けるようにしましょう。
帯状疱疹で後遺症が残ることはありますか?
帯状疱疹は発症した後に神経痛が数か月以上に渡り続くことがあります。その際は鎮痛薬の内服を症状に合わせて量を調節していく必要があります。また、帯状疱疹の皮疹が強い水疱となった場合はへこんだ傷跡が残る事があります。
帯状疱疹は市販薬や漢方薬で治療できますか?
帯状疱疹を発症した際は早期に抗ヘルペス薬を内服することが重要です。ですので、市販薬や漢方薬で対応は出来ず、皮膚科を受診して処方してもらう必要があります。
帯状疱疹とヘルペスの違いを教えてください。
ヘルペスウィルス属は多くの種類があり、皮膚科疾患で主に重要となるヘルペスウイルスには、単純ヘルペスウイルス(HSV)と水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)があり、どちらも水疱を伴う皮疹と神経痛(ピリピリ、ズキズキ、うずく感じ)が出現するのが特長です。HSVはさらにHSV-1(口唇や顔に水疱)とHSV-2(性器に症状)に分かれます。VZVは初感染で水痘を引き起こし、潜伏後に再活性化して帯状疱疹を発症します。帯状疱疹は神経に沿って帯状に皮疹が現れ、強い痛みが特徴です。口唇の近くに皮疹が出た場合など、帯状疱疹か、口唇ヘルペス(HSV-1)か見分けがつかない場合、当院では水疱部位を綿棒でこすってウィルスを調べるデルマクイックHSV、VZV(保険適応)を用いて診断をつけます。いずれも抗ウイルス薬で治療可能で、早期治療が重要です。
帯状疱疹ができやすい場所・部位はどこですか?
帯状疱疹は、体のどの部分にも現れますが。胸部や腹部などの胴体の片側に帯状に現れることが多く、顔面では三叉神経に沿って現れることがあります。また、腰部や首などの神経節に沿った部分にも発症しやすいです。
帯状疱疹はどのくらいの日数治療しますか?痛みのピークはいつですか?
帯状疱疹の治療期間は通常7〜10日間ですが、重症な場合や合併症がある場合は長引くことがあります。痛みのピークは通常、皮疹が最もひどい時期に起こりますが、皮疹が消退してからも神経痛が数週間から数か月にわたって持続することがあります。
帯状疱疹になりやすい人は?
まずは年齢(特に50歳以上)でかかりやすくなります。また、免疫力の低下(免疫抑制状態や抗がん治療を受けている人、免疫抑制薬やステロイドなど)にある人もリスクがあります。ストレスや精神的負荷も発症の引き金になります。