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白癬(水虫・爪水虫)

白癬とは

水虫白癬(はくせん)は、皮膚糸状菌と呼ばれる真菌(カビ)による皮膚の感染症です。俗に水虫(みずむし)と呼ばれるものですが、実際に虫がいるわけではなく、顕微鏡でようやく観察できるレベルの非常に小さな糸状のカビの繁殖によって症状が引き起こされます。
皮膚糸状菌はもともと土の中に生息しているカビなのですが、ヒトの皮膚(角質)好むため、角質が多く湿った部位(特に足や爪、股など)に、湿度の高い季節(夏など)に発症しやすいです。日本における足白癬の有病率は約20%と言われており、自覚症状が乏しい場合は放置されているケースが多いです。
しかしながら皮膚に寄生する感染症ですので、放置しても症状が改善せず悪化すること、また同居人など他者に移してしまう可能性があること、また足白癬の傷から二次的に細菌感染を引き起こす可能性や、特に高齢者の場合は爪が肥厚して(爪白癬)転倒するリスクが高まりますので、積極的な治療が必要です。

白癬の種類

足白癬(あしはくせん)

足の皮膚に発生し、特に指の間や足の裏に皮膚の剥がれが生じます。痒みがでると思われている方が多いのですが、実際には痒みが無い場合が多く、そのため白癬では無いと思い放置されてしまうケースがあります。症状が強くなり、炎症を起こしてくるとそこでようやく痒みの症状がでます。

  • 症状:足の裏や足の指の間の皮膚の角質が剥がれてくるのが主な症状です。足底などに小さな水疱が出るタイプや、踵の角質が固く肥厚するタイプもあります。

爪白癬(つめはくせん)

足白癬を放置すると、爪に進行して爪の中の奥深くに白癬菌が繁殖します。痒みなどの自覚症状が乏しいため放置されている患者様が多いです。爪が肥厚して巻き爪となると痛みを伴なったり、また高齢者では転倒しやするなるリスクが指摘されています。通常の外用薬では効果は乏しいため、抗真菌薬の内服薬が第一選択になります。

  • 症状:爪が厚くなる、変色(白色~黄色)、変形。巻き爪の原因にもなります。

股部白癬(こぶはくせん)、体部白癬(たいぶはくせん)

通常、足白癬を伴っているケースが多く、足の白癬菌が体部や股部に移って繁殖し症状が出現してきます。

  • 症状:境界がはっきりした円形状の赤み、中心部がクリアで周囲が鱗屑。

頭部白癬(とうぶはくせん)

頭と頭が接触するスポーツなどで感染する場合があります。

  • 症状:頭の症状の部位は脱毛し、赤み、鱗屑を伴います。

白癬の原因

  • 皮膚糸状菌と呼ばれる真菌(カビ)が皮膚に侵入して繁殖することが原因です。
  • 感染経路:汚染された物品(タオル、靴、足ふきマット)や直接接触による感染が一般的です。
  • リスク要因:入浴回数が少ない、湿気の多い環境、汗、長時間の靴の着用、免疫力の低下、糖尿病など。

白癬の診断

診断の確定は顕微鏡による検査です。正しく治療するためには皮膚科医による顕微鏡での検査が必要です。

治療法

抗真菌薬

  • 外用薬:クリーム、軟膏などの剤形があります。主に足白癬、股部白癬・体部白癬に有効です。特に足白癬の場合は症状が部分的にしかなくても真菌は周りに潜んでいますので、両足くまなく塗布すること、また2~3か月外用を続けることが必要です。
  • 内服薬:爪白癬の第一選択肢は内服治療です。以前は半年以上の内服治療が必要でしたが、現在はホスラブコナゾール(ネイリン®)の3か月内服で7割以上の患者様で治癒が期待できます。副作用は少なく高齢者であっても、また多数の薬剤を内服中であってもほとんどの患者様は内服できます。治療開始後6週間ほどで採血検査を行い、より安全に治療を行います。内服終了後の経過観察も重要で、停滞もしくは再発の兆しがあれば追加の治療を行います。爪白癬に対する外用薬の効果は弱く、治癒しないまま漫然と継続がされている患者様をお見受けします。白癬は感染症ですから、「治癒」を目指す治療をご提案いたします。

予防策

足を清潔に保ち、乾燥させることです。 たとえ足に皮膚糸状菌が付着しても24時間以内に石鹸で洗い流せば皮膚の中に感染する事はありませんので、毎日足を洗う事は予防になります。

  • 共用物品を避ける(タオル、靴など)。
  • 共同浴場やプールに行った際は帰宅後にも足を洗う。
  • 通気性の良い素材の靴や靴下を選ぶ。

よくある質問(Q&A)

白癬(水虫)はお風呂でうつりますか?

白癬菌は皮膚の角質(垢)に生存するので、お湯の中で生存し続けることはありません。また入浴中は足を洗うという行動があるため、入浴そのもので感染する可能性は低いと考えられます。ただ、同居者に感染者がいる場合、足ふきマットには白癬菌が付着した角質が潜んでいる可能性があり、個人で分けることをお勧めします。また足ふきマットをこまめに洗濯乾燥させることも重要です。

白癬(水虫)の家族と洗濯を一緒にしても問題ないですか?

はい、問題ありません。洗濯し乾燥させれば菌は死滅します。

白癬(水虫)の皮をはがした方がいいですか?

菌そのものは角質の深い部位に繁殖しています。はがれかけた角質にはすでに死んだ菌が残っているだけですので、部分的に角質をはがしても治療効果はありません。

白癬(水虫)にドライヤーは有効ですか?

白癬菌は湿った環境で繁殖するため、足を乾かす事は良いことです。ただ、一度感染した場合はドライヤーで治すことはできません。

白癬(水虫)は市販薬(オロナイン軟膏、等)で治りますか?

オロナイン軟膏には白癬菌を治す成分は含まれておりません。白癬菌への効能をうたった外用薬は一定の効果が期待できますが、正しい塗り方や必要な期間、外用が出来ずに完治していない患者様を多くみます。また市販薬にはかぶれ(接触皮膚炎)を起こすリスクがあり、少しでも改善が見られない場合は皮膚科での診断と治療が必要です。

白癬(水虫)菌が酢で死滅しますか?

残念ながら酢だけで完治させることは出来ません。

白癬(水虫)菌がアルコールで死滅しますか?

アルコールにより多少の抑制効果は期待できますが、白癬菌は皮膚の角質の深部に繁殖するため、完治させることは難しいです。

白癬(水虫)は悪化するとどのようになりますか?

足白癬を放置すると爪の中に侵入して爪白癬となります。爪の中で菌はさらに繁殖を続け、爪が変色して分厚い爪や巻き爪となり痛みが生じる場合もあります。高齢者の場合は爪の変化により転倒するリスクが上がります。爪白癬があることで足白癬の症状を繰り返します。足白癬で足の角質が剥がれてくると、そこから他の細菌が侵入し、蜂窩織炎(細菌感染)を起こすリスクが高まります。また、白癬菌は感染症ですので、他者に移してしまうリスクがあります。