あざについて
あざとは、一般的に赤あざ、青あざ、茶あざなどと表現される種類があります。あざは基本的には生後からあるものが多いのですが、成人になってから発症するものもあります。
赤あざは乳児血管腫(いちご状血管腫)、単純性血管腫などがあり、青あざは太田母斑、異所性蒙古斑、後天性真皮メラノーシス(ADM)など、そして茶あざは扁平母斑などがあります。
いちご状血管腫について
いちご状血管腫(Strawberry Hemangioma)は、出生後まもなく現れることが多い良性の血管腫で、皮膚の表面に赤い隆起や斑点が見られるのが特徴です。名前の通り、いちごのような鮮やかな赤色を呈し、主に頭部や顔、首、背中などに発生します。
乳児の約5〜10%に見られ、特に女児に多いとされています。一般的に単一部位に現れることが多いですが、複数の部位に生じることもあります。
治療
多くのいちご状血管腫は、数年かけて自然に消失する傾向がありますが、その場合瘢痕を残す事があります。そのため、早期から治療を行う事が一般的です。
主な治療法はレーザー治療で、特にパルス色素レーザーが有効です。レーザーは血管腫に含まれる血液を加熱・破壊し、腫瘍を縮小させる効果があります。複数回の施術を必要とし、数ヶ月の間隔を空けながら治療を進めていきます。
副作用・注意点
治療には個人差があり、複数回の施術が必要です。
治療後には一時的な赤みや腫れ、まれに色素沈着が見られることがあるため、アフターケアが重要です。 レーザー治療が保険適応となる疾患ですので治療のご希望がある方は施術が出来る施設へご紹介いたします。
単純性血管腫について
単純性血管腫(Port-wine Stain)は、生まれつき存在する良性の血管奇形で、皮膚の表面に赤から紫色の平坦な斑が見られるのが特徴です。
顔や首、手足など、身体のあらゆる部位に発生することがあります。特に顔面の正中(眉間、おでこの真ん中、うわまぶた、鼻の下、うなじ)に見られるものを正中部母斑(サモンパッチ)と呼んでいます。初期には薄いピンク色を呈することが多いですが、年齢とともに徐々に濃くなり、隆起してくることもあります。
一般的には単純性血管腫は出生時から存在し、成人になっても自然に消失することはありませんが、サモンパッチの場合は1歳半までに薄くなる場合があります。
治療
単純性血管腫の治療は、美容的な理由や、増殖により合併症が懸念される場合に行われます。主な治療法はレーザー治療で、特にパルス色素レーザーが効果的です。このレーザーは血管に含まれるヘモグロビンに反応し、血管を破壊することで色調を薄くする効果があります。複数回の施術が必要で、治療間隔を空けながら徐々に改善していきます。
副作用・注意点
レーザー治療には個人差があり、効果が現れるまでに時間を要することがあります。治療後は一時的な赤みや腫れ、まれに色素沈着が生じる可能性があるため、適切なアフターケアが重要です。
レーザー治療が保険適応となる疾患ですので治療のご希望がある方は施術が出来る施設へご紹介いたします。
太田母斑について
太田母斑は主に眼周囲や頬、額、こめかみなどに青黒色の色素斑が現れるのが特徴です。一般的に片側性(左右どちらか片方)に現れますが、まれに両側性の症例も報告されています。
太田母斑の原因は明確には解明されていませんが、メラノサイト(色素細胞)が何らかの原因で真皮層に迷入し、そこでメラニンを産生し続けることが要因とされています。このメラニンが真皮層に蓄積することで、皮膚に青黒い色が現れると考えられます。
太田母斑は生まれつき存在する場合と、成長とともに現れる場合がありますが、いずれにしても外的な刺激によるものではなく、先天的な要素や体質が影響していると考えられます。
また、太田母斑は皮膚だけでなく、眼球(結膜や強膜)に色素を伴うこともあります。
治療
医療的に治療が必要な疾患ではありませんが、美容的な理由から治療を希望する方が多いです。最も一般的な治療法はレーザー治療で、特にQスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザーなどが有効で、ピコレーザーも有効だとする報告も出てきています。これらのレーザーは、メラニン色素を選択的に破壊することができ、治療間隔を空けながら複数回施術をしてくことで色素を徐々に薄くしていきます。
副作用・注意点
治療には複数回の施術が必要で、効果には個人差があります。 治療後は一時的な赤みや腫れ、色素沈着のリスクもあるため、適切なアフターケアが重要です。
レーザー治療が保険適応となる疾患です。あざの大きさや年齢によって当院で治療ができない場合がございます。その際は治療が出来る施設へご紹介いたします。
異所性蒙古斑について
異所性蒙古斑(いしょせいもうこはん)は、通常の蒙古斑(もうこはん)とは異なる部位に発生する青灰色の色素斑のことを指します。蒙古斑は新生児の約80~90%に見られる一般的なもので、通常はお尻や背中の下部に現れます。しかし、異所性蒙古斑はこれらの部位以外に、腕や脚、顔、体の側面などに出現するのが特徴です。
異所性蒙古斑の原因は、通常の蒙古斑と同様に、皮膚の真皮層にメラノサイト(色素細胞)が過剰に存在し、メラニン色素を多く産生することによります。このメラノサイトは通常、胎児期に表皮から真皮へ移動するのですが、その一部が特定の部位に残ることで、色素斑が形成されます。異所性蒙古斑の色は青灰色や青黒色で、形状は不規則です。生まれた直後から見られることが多く、一般的に痛みやかゆみなどの症状を伴いません。そのため、健康に悪影響を与えることはありません。
臀部などにできる通常の蒙古斑は自然に消退しますが、この異所性蒙古斑は成人期まで残ることがほとんどです。
治療
異所性蒙古斑は、健康に問題を引き起こすことはありませんので、治療は通常必要ありません。しかし、見た目が気になる場合は、レーザー治療を検討することがあります。特に、QスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザーが効果的で、治療間隔を空けながら複数回施術をしてくことで色素を徐々に薄くしていく方法です。
副作用・注意点
通常、複数回の治療が必要であり、個人差があります。
レーザー治療が保険適応となる疾患です。あざの大きさや年齢によって当院で治療ができない場合がございます。その際は治療が出来る施設へご紹介いたします。
後天性真皮メラノーシス(ADM)について
後天性真皮メラノーシス(Acquired Dermal Melanosis, ADM)は、真皮層に存在するメラノサイト(色素細胞)による色素斑です。この色素斑は表皮にあるシミや肝斑とは異なり、皮膚の深部にあるため、一般的な美白化粧品などでは改善が難しいことが知られています。
主に20代から30代の女性に多く見られ、日本人を含むアジア人に多く発症するのが特徴です。ADMは、シミや肝斑(かんぱん)と混同されやすいですが、原因や治療法が異なるため、正確な診断が重要です。
原因と発症メカニズム
ADMの原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因が考えられています。その他、加齢、ホルモンバランスの変化、紫外線の影響も関与していると考えられます。
肌の奥にある真皮層に存在するメラノサイト(色素細胞)から産生されたメラニン色素が真皮層に取り込まれ、マクロファージという細胞に取り込まれることで、皮膚に灰色から青みがかった色素斑が生じます。
症状
ADMは、両頬や鼻の周囲などに左右対称に複数個現れることが一般的です。色調は灰褐色や青灰色で、1個あたりの大きさは5mm程度です。ADMは肝斑(かんぱん)と併発することも多く、両者を区別するのが難しい場合があります。
診断
ADMの診断は、皮膚の外観や症状の特徴から行われます。また、肝斑や他のシミとの鑑別診断のために、当院では肌診断機で撮影を行い判断致します。
治療
ADMの治療は唯一、レーザー治療でしか効果がありません。IPLやピーリング、外用美白剤などは無効です。レーザーはQスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザー、もしくはピコレーザーなどが効果的で、これらのレーザーは真皮層に存在するメラニンを破壊し、徐々に色素を薄くしていきます。
副作用・注意点
完全な除去には時間がかかることが多く、複数回の施術が必要です。 治療効果には個人差があります。
治療後は一時的な赤みや腫れ、色素沈着のリスクもあるため、適切なアフターケアが重要です。
当院では保険適応外での治療となります。
扁平母斑について
扁平母斑(Café-au-lait spot)は、生まれつき存在する色素性の皮膚変化で、茶色から薄い褐色の平坦な斑が見られるのが特徴です。その名の通り、カフェオレのような色を呈し、一般的に境界がはっきりしていることが多いです。
身体のどの部位にも発生する可能性がありますが、顔、体幹、手足など、全身に見られることがあります。大きさはさまざまで、小さなものから数センチに及ぶ大きなものまで幅広く、生涯を通じて色が濃くなることはありますが、盛り上がることはありません。
また、扁平母斑自体は良性であり、健康に直接影響を与えることはありませんが、多発する場合は神経線維腫症1型(NF1)などの遺伝性疾患の可能性があるため、皮膚科専門医による診察が必要です。
治療
扁平母斑の治療は、主にQスイッチルビーレーザーやピコレーザーが使用されます。これらのレーザーはメラニン色素を破壊することで、斑の色調を薄くする効果があります。ただし、扁平母斑は完全に消失させることが難しく、再発する場合も多いです。
形がギザギザしていれば比較的効果があるものの、形が丸いものは難治であることが知られています。
副作用・注意点
治療効果には個人差があります。治療後は一時的な赤みや腫れ、色素沈着のリスクがあります。
Qスイッチルビーレーザー治療は2回まで保険適応となります。再発のリスクが高い疾患であるため当院では積極的な治療は行っておりません。治療のご希望がある方は施術が出来る施設へご紹介いたします(当院での治療をご希望された際は保険適応外の治療となります)。